債務整理:整理屋と手を組む提携弁護士に要注意!

借金生活でに日夜悩んでいると借金返済の甘い言葉や電柱のチラシについ引き寄せられて、悪い状態を改善するどころか更に最悪の状態にしてしまうことがあります。

そしてそこでのメインプレーヤーとなるのが整理屋と呼ばれるグループ、そして提携弁護士あるいは非弁提携弁護士と呼ばれる営利至上主義の弁護士たちです。

整理屋とは自分の利益優先の弁護士と手を組んで、弁護士でないのに債務整理を業として行い(=非弁行為)多額の不当利益を手にする、詐欺ビジネスの住人です。

一方提携弁護士は業者(整理屋・紹介屋)と組んで、お客を集め、事務長に名前を貸し依頼者の債務整理を行います。整理屋と手を組むから提携弁護士と呼ばれます。

提携弁護士の最悪の例では事件処理が極めてずさんで、サラ金側の言いなりの(依頼者に不利な)和解をし、報酬も高く、仕事内容(金銭の明細)を明らかにせず、依頼人に対する報告しない、などの特徴があります。

今回はその整理屋と提携弁護士共同による債務整理トラブルの事例と、トラブルを回避するための予防策を解説します。

整理屋の典型的な手口(寸劇風に)

※次のショートストーリーはフィクションであり固有名詞は全て架空のものです。

昼休み、食事を終えた吉田敏夫は気になっていた新聞のチラシを取り出してもう一度眺めてみた。チラシには「債務の一本化」「借入件数不問」「誰でも即刻融資」などの言葉が太字で並んでいる。

敏夫は親の残した借金750万円の返済に苦しんでいた。サラ金7社への毎月返済額は12万円を超える。時々返済が滞り督促も執拗さを増しつつあった。

「このままじゃ自己破産か」と力なくうめく日々が続いていた。

敏夫はビルの外に出て、思い切って電柱チラシにある電話に連絡を入れてみた。反応は素早く、女性の歯切れのいい応対に好感を持った。気が付いたらその日の帰りに事務所を訪問するアポを取っていた。

水道橋にあるその事務所は直ぐ見つかった。雑居ビルの5階、受付係に訪問理由を告げると直ぐにパーティションで区切られた応接室エリアに案内された。事務所には10人ほどの社員いて雑然とした中にも活気のある雰囲気が感じられた。

やがて担当の安岡という社員が応接エリアに姿を見せ、自己紹介ののち敏夫は用件を切り出した。まず最初に融資が可能かどうか審査するというので、所定の用紙に記入を済ませその結果を待つことにした。

10分ほどして安岡が戻って来た。「まことに残念ですが、当社からの融資は難しそうです。審査が通らなかったもので」と済まなそうに言った。

「審査ってどういうものですか?」敏夫は一瞬ムカッときたが、感情を抑えて言った。
「弊社独自のもので詳しくはお教えできないのです。申し訳ございません」
「そういうことですか・・・・・」困っているから来たのに審査が通らぬとは腹が立つ。無駄な時間を費やしてしまったと後悔しながら、敏夫は負け犬の気分で帰り支度をはじめた。その時、安岡が口を開いた。
「お困りなのはよく理解できます。いかがです、思い切って債務整理をなさったら?お詫びに代えてといいますか、いい弁護士の先生をご紹介できますが・・・・・」

3日後の午後3時、敏夫は恵比寿にある舟田法律事務所応接室にいた。結局安岡に紹介された弁護士への相談を決めたのだ。事務所には20数人の社員の姿が見えた。これだけの人を使っているなら結構規模は大きそうだと、敏夫は少し安心した。

待つこと30分、目の前のお茶が冷め切ったころ弁護士ではなく事務長という人物が現れた。若い社員を連れていた。
「ああ、お待たせして申し訳ない。先生が外出先から戻れそうもないので、私がお相手します。先生には戻り次第内容お伝えしておきますからご安心ください」久保田というその人物はとつとつとした話しぶりの、50がらみの小太りの男だった。

「そうですか。宜しくお願いします」敏夫は少し落胆したが、事務長ならまあいいかと無理に自分を納得させた。
「お待たせしている間に債務の状況をちょっと調べてみたんですが、毎月の返済を8万円ほどまで減額できそうです」よし8万円か、今より4万も少ない。少しは楽になるかな。敏夫は改善の兆しに内心喜んだが、話がうますぎるとその裏付けを聞きたくて膝を乗り出した。

「その返済が減る理由ですが、どうしてですか?」
「利息制限法というのをご存じでしょう。利息の上限は20%なのですが、借り入れ先の中には30%にもなる利息を取っているところが何社かあったんです。その利息の取り戻しと返済計画の引き直し、それと借り入れ先の変更ですね。その辺の効果を総合して結局8万円ぐらいということです」
「そうですか。そんなうまいこと行くもんですか?」敏夫は半信半疑のまま言った。
「それは概算ですから、後日ちゃんとした書類を作成し吉田さんにお送りするのでそれで確認できますね」
「弁護士さんの場合、着手金とかあると聞いたんですが」
「こういう案件ですと、着手金はいろいろ含めて30万円ほど頂いております。」事務所の方からは電話の呼び出し音や話し声が時折り聞こえてくる。弁護士事務所での相談ということもあって敏夫の疑念は次第に薄れ、敏夫は事務長の話に次第に引き込まれていった。

半年後、会社でデスクワークに忙しい敏夫に総務課から呼び出しがあった。まさか借金の話ではないだろうな。舟田弁護士事務所と契約して以来サラ金業者からの督促はぴたりと止み、今はスッキリとした気分で仕事に専念できている。弁護士事務所への返済きっちりとも続けているし、何だろう?

応接室で聞く総務課長の話に敏夫は息を呑んだ。給料の差し押さえだという。相手は東都金融。そこはしかし整理がついているはずじゃなかったのか。一体全体、どうなってる?敏夫は悪夢の再来に胃酸のせり上がりを感じ嘔吐感を抑えるのが精一杯だった。

整理屋と提携弁護士による悪質業務

弁護士でないのに債務整理を業として行う人たち(整理屋集団)が相談者(=顧客)獲得を最優先とした弁護士と手を組み、借金苦に悩む人たちを利用して蓄財する不法行為のことを指します。

比較的多い例では、整理屋集団が提携弁護士の事務所に配下の人間を事務員として配置し、実質的に法律事務所を乗っ取ってしまいます。集団のボスは事務長などと称しその法律事務所を統制することになります。上記の寸劇では、舟田弁護士事務所が正にそれで、ボスが久保田事務長です。

こうした提携弁護士事務所は、紹介屋からの紹介、新聞、雑誌広告、怪しげな団体などから、大量に債務者の紹介を受け、弁護士の実質的判断を通さず、事務員と名乗る整理屋が、勝手に債務整理を進めます。彼らはプロです。オレオレ詐欺の巧妙さを思い出してください。

ところでパートナーたる提携弁護士の役割ですが、単なる名前貸し、事務所貸しから積極的加担まで実にさまざまです。

悪質業務の見分けかたと対応策

まず前提条件として、①借金返済に困っている人を標的に権限外の債務整理を行い利益を上げる整理屋とか紹介屋という詐欺グループが暗躍しているということ、②そしてそういうグループと手を結んで自らも法の適正な運用をおろそかにして収益確保に走る提携弁護士がいるということ認識しておく必要があります。

弁護士に任せてあるから大丈夫というのは危険です。債務整理の過程で次のような兆候が見えたら、それは悪質業務のサイン、まずその弁護士の所属する弁護士会に申し出て相談することです。弁護士会には問題のある弁護士の情報があり、そういう相談は基本的に無料です。

利息制限法を適用せず業者の主張通りの債務を認めてしまう

和解の内容を明確にしない

弁護士事務所への毎月の返済がとりわけ厳しい

弁護士報酬が異様に高い

何でも先延ばしにする傾向がある

それと不審に感じたら借金の一覧表、契約書、債権者や弁護士からの郵便物、電話の会話記録など分析は後回しにしてとにかく捨てないで保管しておくことです。損害を挽回する際に有利に働きます。

補足:整理屋、紹介屋、買取屋

以上述べた整理屋、紹介屋はつねに弁護士と手を組んで仕事をするわけではなく、単独でも多重債務者を標的として営業をしています。以下、簡単にご紹介します。

整理屋:権限もないのに借金整理を業として行う悪質業者で、弁護士ではないのでその整理の方法はずさんで当初費用は安くても将来に禍根を残すケースがほとんどです。近年、その方法は巧妙化し上述のように正規な弁護士と組んで仕事をするケースが多くなっています。近づいてきても無視しましょう。

紹介屋:「スピード融資」「即融資」「車で融資」などの甘言でとにかく借金を減らしたい客を集め、他の金融業者を紹介する業者。自らは融資せず法外な手数料を取ります。

買取屋:紹介屋と同じ手口で多重債務者を集め、融資はせずにクレジットカードで買い物させそれを半額で買い取ったり、商品券を買わせて金券ショップで換金させ手数料を取るという手口で稼ぎます。

購入した分は後日債務者の口座から引き落とされます。自分が手にした5万円の現金に対して10万円分の引き落とし。多重債務者は永久に浮かばれません。

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