夫の自己破産:妻の取るべき賢い選択
自己破産が契機となって離婚するケースは少なくありません。自己破産について妻の側から問題を整理しました。離婚が有利になる場合もあるので要チェックです。
※以下は圧倒的に多い夫側の自己破産を例に解説しています。
自己破産を理由に妻から離婚を要求できるか?
婚姻を継続しがたい重大な事由がない限り、自己破産をしたというだけでは妻が一方的に離婚をすることはできません。その重大な理由とは?
・配偶者の不貞行為
・配偶者の悪意の遺棄
・配偶者の生死が3年以上不明な場合
・配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合
・婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
自己破産は最後の項「婚姻を継続しがたい重大な事由」には該当しないとされており、自己破産を理由とした離婚はできません。しかしこれは離婚を要求された方が拒絶すれば離婚できないということで、双方が合意すれば離婚することに問題ありません。ただ、別れても連帯保証人(代表例は自宅のローン)になっていればその縁は決して切れることはありません。
離婚のタイミング
離婚となった場合、自己破産とのタイミング調整はとても重要です。離婚直後に自己破産をするケースが多いのですが、こういう場合は免責が下りない時が多いので注意が必要です。妻に財産の名義を移し財産隠しを図ったと裁判所に判断されるためです。
絶対ではありませんが、離婚するのであれば自己破産の申立てをする半年前が1つの目安になります。その場合も、協議離婚ならば財産配分が極端に妻に偏らぬような配慮が必要です。
なお夫の家庭内暴力など夫側に「婚姻を継続しがたい重大な事由」があれば、妻は慰謝料として相当の財産を正当に請求できることになります。裁判所として夫の浮気程度では慰謝料は認めがたいようですが。
また、離婚を借金整理の奥の手として使うツワモノも存在します。合法的に本人の資産を妻に移動して資産を残し、そののち自己破産するケースです。夫婦関係が良好であればこんな方法も検討できるということです。
離婚しても変わらない連帯保証人の責任
こんなケースを考えてみましょう。妻由美子は夫のギャンブル好きが理由で5年前に離婚し別居中。現在夫が住む家は夫を主債務者として10年前に住宅ローンを組んで購入したもの、由美子が連帯保証人となっている。
ある日、由美子の元に家の債権者と名乗る男から電話が入り、別れた夫が自己破産した旨告げられる。自宅には1200万円のローン残債があるので連帯保証人である由美子が一括返済する必要があると言う。ちなみに自己破産した夫は借金がゼロになるのだそうだ。
それを聞いて由美子はがく然とした。そんな夫だから早めに離婚して再出発しようとしたのに。別れたあとも自堕落な生活を続けて自己破産した夫の尻ぬぐいをしなければならないのか。借金というのは追いかけてくるのか。
結論から申します。ローン残債の返済を逃れるすべはあまりありません。そもそも連帯保証人という制度に欠陥が多すぎるのです。本人が死亡しても子孫に負の遺産として相続もされます。
以下、妻が自宅の連帯保証人になっていると想定し、離婚を決意した時、離婚後に別れた夫の自己破産の意志を聞き知った時、連帯保証人として一括返済を求められた時、に分けて解説します。
この性悪の連帯保証という制度は離婚後も付いて回るのです。
離婚決意時の考慮事項
■ 慰謝料はいらないからと言って連帯保証している自宅ローンの残債を全て返させる。資金がないと言っても、どこからか借りさせる。とにかく連帯保証人から外れることが第一。
■ 離婚の意思は隠して住宅ローンの返済を最優先させる*。妻自身も専業主婦なら勤めに出て返済を支援する。
※ローン返済が促進するなら離婚の意思は隠してもオープンでもどちらでもいいでしょう。ケースバイケースです。
離婚後、別れた夫の自己破産の意志を聞き知った時
■ 自宅を残せる個人再生を使うことにより、家は残せるし(連帯保証人への請求なし)借金も1/5に減額できることを教え、自己破産をやめさせる。
■ ローン残額次第では妻由美子が残額を払って、かつての自宅を手に入れる。連帯保証人として残金を支払っただけでは家は手に入らない。
この方法は日頃から別れた夫の所在や近況をチェックしておく必要があります。連帯保証人ですからいやでも仕方ありません。自己破産されたあとでは対応が面倒になり、対策法も限定されてしまいます。
連帯保証人として一括返済を求められた時
■ 金利の低い金融機関から長期の融資を探して資金手当をする。連帯保証のためではどこも貸さないので理由は別に考える。
■ 債権者と分割払いや金額減額を交渉する。債権者としても自己破産などされて回収金ゼロになるよりいいはずだと、粘り強く交渉する。
■ 個人再生や自己破産など公的な借金精算を考える。
■ 本当に窮したら夜逃げという方法もあります。
創意工夫
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