借金で任意整理か特定調停・選ぶならどっち?

債務整理には任意整理と特定調停という方法があります。個人再生や自己破産を選ぶほど深刻ではないが、いずれ返済に困るのが目に見えているような場合に適しています。

今回は選ぶ際の参考になるよう、任意整理と特定調停の特徴と注意点をまとめてみました。ごく端的に言いますと、

任意整理:ある程度任せっぱなしで借金整理ができる任意整理、本人負担は小さいが20万前後の費用が難点。

特定調停:自ら借金の減額交渉に臨む覚悟の特定調停、外部委託無しの本人勝負で経費を圧縮、その後の生活にもプラス効果を期待。

折衷案:基本は特定調停だが要所で専門家の助言を仰ぐいいとこ取り路線もある。

というようになります。それぞれ特徴があるのでご自分の性格や借り入れ先、借金総額などの状況に照らして判断することになります。

任意整理の特徴

任意整理は各債権者と和解交渉を行う私的な整理方法で、通常は本人ではなく弁護士や司法書士*が債務者の代理人となって交渉します。
※司法書士による相談・交渉・和解は140万円以下の事案のみに制限されています。

任意整理のメリット

■本人の負担が小さい:代理人の弁護士等(弁護士又は司法書士)が債権者との交渉するため本人は債権者と会わずに交渉が進む。精神的、時間的な負担も少ない。

■有利な合意条件:任意整理に慣れた弁護士等であれば、有利な条件で債権者の合意を獲得できる場合が多い。

■過払い金返還:過払い金返還もあれば、それも含めて交渉してくれる。サラ金との取引期間が長ければ効果が大きい。

■返済督促停止までのスピード:弁護士等介入により返済督促が即刻停止する。

任意整理のデメリット

■弁護士等への依頼費用:弁護士に依頼すると1社当たりの着手金4万円前後、減額報酬15%、過払い金返還報酬20%程度かかる。

借金が60万減額し、過払い金も50万円戻ったと仮定すると返済軽減額110万円に対し費用が23万円となる。

特定調停の特徴

特定調停は、裁判所が仲裁役となって債務者と各債権者との和解の成立を支援する公的な手続です。仲裁役は調停委員と呼ばれ、弁護士や会社役員・団体理事、公認会計士などが多数を占めています。

参考サイト:自己破産だけじゃない借金整理・徹底解説

特定調停のメリット

■費用が圧倒的に安い:債権者3社として、収入印紙と切手代の4000円弱程度。

■債権者への心理的効果:特定調停は債務者本人の借金整理に対する意気込みを感じさせ、その後の交渉にプラス効果が期待できる。

特定調停のデメリット

■本人の負担が大きい:資料準備、申立書作成は基本的に全部本人が行う。

■簡易裁判所での調停への出席負担:裁判所では調停委員、債権者、本人の三者による調停が行われる。調停の開催頻度や(月1回程度の平日)、債権者単位での調停など、なにかと時間がかかる。

■調停での交渉力:交渉に慣れていない場合は破談もしくは自分に不利な内容になる可能性がある。

■過払い金返還1:利息制限法による過払い金返還については、別途過払い金返還請求訴訟をすることが必要になる場合がある。

■過払い金返還2:過払いが発生しているのに気付かず、

『甲乙間において、本条項に定めるほか一切の債権債務の無きことを相互に確認する。』

との文言を和解書に盛り込んだ場合、その後専門家に依頼した場合でも過払い金の不当利得返還請求訴訟の提起はできなくなるので注意を要する。

■調停調書の強制力:調停の結果合意された調停調書は裁判の判決と同じ効力を持ち、不履行の場合は差し押さえ等の執行が容易。

■返済督促停止が遅い:債権者の督促が止むのは裁判所への申立て完了後で申立て準備期間中は辛抱が必要。

※ 特定調停ではサラ金への過払い利息の有無が1つのポイントになります。上述したように過払い利息の返還が絡むと手続きが面倒になる場合があるので(特定調停の有利さが生かされない)、返還額が多額に昇りそうな時は他の手段を考えましょう。

補足:特定調停+相談という方法

自由時間に余裕があり資料準備や調停出席をやり通す意欲はあるので特定調停を選びたい。しかし利息制限法による再計算や交渉の駆け引きなどがよくわからない、その点が不安だという方も多いと思います。

そういう場合は、特定調停の意向を伝えた上で専門家の助言を受けつつ手続きを進める方法もあります。二者択一でなくそんな折衷案も可能です。

しかし専門家への相談が度重なると最初から任意整理を依頼していた方が良かったなどということもあるので、利息の過払いが発生していない、比較的単純なケースがいいかと思います。

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