任意売却 (5):資金配分とはどういうこと?
任意売却のハイライトは、なんと言っても物件の価格設定と各債権者への資金(任意売却で得た資金)の配分交渉です。
その内容を知ることによって、任意売却という自助努力の(全くの他人任せではないという意味での)借金整理法を無理なく、無駄なく利用することが可能になります。以下、例を使って解説します。
例題の条件を設定します
1.競売となった場合の基準価格(市価の7割程度):1300万円
2.売却可能な市場価格:1800万円
3.借り入れ先数:3社
4.残債:合計:2800万円
住宅金融支援機構(支援機構)から 2100万円、1番抵当権
○○都銀から 500万円、2番抵当権
××信販から 200万円、3番抵当権
配分案ができるまで
任意売却の担当業者は、以上の条件をもとにして1番抵当権者の支援機構から順次交渉を行い、配分案を固めて行くことになります。配分は住宅金融支援機構の定めたガイドラインがあるので、それを基本に交渉を進めます。
1000円の回収も見込めない2番、3番の抵当権者にも気持ちよく抵当権を抹消してもらわねばなりません。そこで業界用語でハンコ代と言いますが、2番、3番の抵当権者に抵当権抹消手数料とも言うべき配分を行うのが普通です。
不動産業者の仲介手数料は400万以上の取引で物件価格の3%+6万円、計算すると60万円になります。
抵当権抹消登録費用として、約4万円必要です。租税公課対策費とも言うべき費用です。住宅ローン滞納者は税金滞納で差し押さえを受けているケースがあり、それを外してもらうための費用です。
仮に固定資産税と住民税合わせて100万円の滞納があるとした場合、支援機構の基準では10万円しか配分できません。
これで納得するかどうかは自治体次第です。これがもとで交渉が難航し任意売却不成立となる場合が結構多いのです。
マンション管理費滞納分は、同じく支援機構基準でなんと5年分を限度として満額が配分可能です。しかし、何よりも滞納した税金の返済を優先すべきです。税金滞納があると任意売却に限らず何かに付けて面倒になります。
引っ越し費用は交渉次第でだいたいは認めてくれるようです。
以上をまとめると次のようになります。
■ 配分案(決定)・・・・・実際の物件売却はこれからです。
・物件売却予定額:1800万円
・支援機構:1600万円 ←(残債2100万円に対して) :差し引き500万円の残債
・○○都銀:30万円 ←(残債500万円):残債ゼロ
・××信販:20万円 ←(残債200万円):残債ゼロ
・仲介手数料:60万円
・抵当権抹消登録費用:4万円
・租税公課:10万円 ←(残債100万円):残債ゼロ
・マンション管理費:46万円 ←(残債46万円):残債ゼロ
・引っ越し費用:30万円
この例では任意売却の結果、自宅を1800万円で売却することにより、
・2800万円あった3社への借金が、支援機構(正しくは保証会社から委託を受けた
債権回収専門会社)1社への無担保借金500万円になり、
・滞納した税金やマンション管理費もゼロになり、
・引っ越し費用も確保でき、
・抵当権も後顧の憂い無く解消しました。
とは言え、これはあまりにもうまく行った任意売却の理想形です。都銀や信販がこれで納得するかどうかは難しいところです。連帯保証人がいれば任意売却交渉などには応ぜず矛先はそちらにに向かうかも知れません。
しかし、こういうケースをイメージすることで競売の不利さ加減が浮き彫りになり、また任意売却の相談ももっと借り手有利に進められるはずです。
任意売却の専門家にしっかり仕事をしてもらえばこれだけの成果を挙げられるのです。関連する知識を蓄え(例えば個人再生とどどちらが有利かなども考え)、任意売却の相談に臨みたいものです。