自己破産のデメリット

自己破産は、借金に苦しむ人を借金から解放し人生をやり直すきっかけを与えてくれるありがたき国の制度です。

しかしその自己破産の処理過程で申立者本人は勿論、周囲をも巻き込んで大小の波乱を生ずるのは論を待ちません。ここではそれを自己破産のデメリットとしてまとめてみました。

財産の差し押さえのデメリット・・・影響度大

申立者名義の土地や自宅などの不動産は全て失います。ローン支払中の家も失いますが、その後のローン支払いはなくなります。査定額20万円以上の車も基本的に差し押さえの対象となります。

現金・預金は99万円を超える部分が差し押さえの対象です。

現在会社に勤務中で将来退職金を受給できる場合は、今やめたと仮定した場合に手にする退職金の1/8が現在手持ちの現金とみなされ、99万円の枠内に算入されます。

例えば現在の退職金総定額を400万とした場合、その1/8は50万、99万から50万を引いた49万円が残せる現金ということになります。

配偶者の財産は、結婚前からの財産や配偶者個人の働きによるものと証明できれば差し押さえから除外されます。

※給与生活者の給料は差し押さえの対象とはなりません。今後の生活再建の基本となるものだからです。テレビドラマの給料差し押さえは債権者がやることで、自己破産とは関係ありません。

家族に迷惑を引き起こすデメリット・・・影響度大

自己破産の及ぼす最大のデメリットなので別ページにまとめました。「自己破産：家族への影響とその後の生活」をご覧ください。

就労制限のデメリット・・・影響度中

自己破産の申立者は免責が確定するまで一部の職種では就労上の資格制限を受け、一定期間職場を離れることになります。それがもとで辞職を余儀なくされるケースがあり、再生への道のりが最初からつまづくことになります。

制限を受ける職種は弁護士、公認会計士、 税理士、弁理士、 公証人、 司法書士、 宅地建物取引業者、 証券会社外交員、 質屋、風俗営業者、 古物商、 生命保険募集員、 損害保険代理店、警備員、 建設業者、後見人など、より詳しくは下記サイトを参照ください。

参考サイト：「自己破産すると一時的に就けなくなる職業・資格一覧」　

項目だけ見ると多そうに感じますが、影響を受けるのは実質的に数千人に一人ぐらいに該当するデメリットと思います。

名前が記録され人に知られるデメリット・・・影響度小～中

■ 破産者として官報に掲載・・・影響度中

官報とは国が発行する広報紙で、一般の新聞とは違って普通の書店にはなく一般人にな縁のないものです。したがってかつては破産の事実を知ることができるのは事実上、債権者、裁判所、手続きの依頼を受けた弁護士・司法書士などの専門家だけで、まず周りの人には知られません。

しかしインターネットの普及で今では、その気になれば容易に検索できるのです。あくまでも勤め先や所属組織がそういうことに興味があればの話ですが、破産者の立場からは知られるリスクが増えたことになります。官報のリスク、小さくありません。知られた場合の対応も考えておきましょう。

参考リンク：インターネット版官報について

■ 破産者名簿への記載・・・影響度小

本籍地の市町村役場の破産者名簿に記載されます。破産者名簿は非公開なので、基本的に一般人の目に触れることはありません。

更に同時廃止*の場合は、最高裁の通達により 本籍役場には通知をしない取り扱いとなっているようです。

※同時廃止とは？：少しややこしいのですが、個人の自己破産の場合、破産管財人を選任して債権者に分配するほど資産が残っているケースはまれなので、裁判所は「破産開始の決定」と「破産廃止の決定」を同時に行います。これ同時廃止と言います。破産案件としては小規模だと言うことです。

■ 民間の信用情報機関への登録・・・影響度・・・中
個人信用情報（ブラックリスト）に自己破産の情報が載り、 約５年間は消えないと言われています。 金融機関からの借入、クレジットカードの新規取得はまず不可能です。

既に持っているクレジットカードは個々のカード発行会社の対応にもよりますが、遅くとも次回更新時までには使用不能となる公算大です。

なお、自己破産しても銀行口座の新設やキャッシュカード作成には問題ありません。

保証人に大きな迷惑を与えてしまうデメリット・・・影響度大

以上のデメリットは本人や家族のこうむるデメリットですが、保証人に与える甚大な影響は自己破産を先延ばしする一大要因ともなり得ます。

自己破産にまつわる保証人との関係は、「借金の保証人：その責任と対抗策は？」というページにまとめました。そちらをご覧ください。

負い目を感ずるデメリット・・・影響度小～大

自己破産は国家公認の人生やり直しのチャンスです。自己破産を大失敗とだけ捉えるか、人生をリセットして2回生きられる一大チャンスと考えるかで自己破産の心理的影響は大きくも小さくもなります。前向きに考えましょう。