自己破産で弁護士と司法書士・頼むならどっち?
自己破産の手続きをする場合、普通は弁護士か司法書士の事務所を訪れ相談をすることになります。その際、ある程度予備知識を持って相談に臨むと後での後悔が少なくなります。まず基本的な違いから見ていきましょう。
法律上の制限
債務処理では次の3つに着目します。
■ 弁護士:制限無しで法律業務をすべて扱うことができる。
■ 司法書士:法務省が実施する司法書士試験に合格し、司法書士会に登録して登記・供託業務を行う。
■ 認定司法書士:法務省の認定を受けた司法書士で、140万円以下の民事事件の相談・交渉・和解をする権限、及び簡易裁判所での訴訟の代理をする権限がある。
このように認定司法書士は債務処理での交渉や訴訟代理が可能なので、弁護士と同等の権限があると考えがちですが実は上記のように一部の民事事件に限るとの制限があります。
複雑な事実問題や法律問題がある事案、事実問題・法律問題を相手方が争っている事案などは司法書士の能力を超えており、司法書士が扱うに適していないことまず理解しておきましょう。
弁護士が法の番人との立場であるのに対し、司法書士は特定業務の代行を業としたビジネスサイドの専門家なのです。
費用面での違い
弁護士・司法書士間での違いに加えて事務所間での違いもあるので、明確には記載できません。比較のできる、個人の自己破産で同時処理可能な標準的なケースでは以下の費用が目安となります。
■ 弁護士:債務整理の着手金 約20万円 プラス成功報酬約20万 約40万前後
■ 司法書士:普通着手金はなく20万~30万円
事務所間で費用のバラツキが結構あるので、何カ所か調べてから依頼するのがいいでしょう。
やはり弁護士報酬は高め、しかし手続き途中で司法書士の権限不足が判明し弁護士への切り替えが発生すると、費用面でのロスが目立ってきます。
※自己破産では弁護士など専門家への依頼費用の他に裁判所に支払う引継予納金が必要となります。破産申立人にさしたる財産がない場合の同時破産という手続きでは少額ですが、少額管財では20万円、通常管財事件では50万円の費用がかかります。
運用面での違い
司法書士は本来法律上扱えない1社当たりの経済的利益140万円超の事件についても「本人訴訟支援業務」という形で手続きを進める慣行があります。
本人訴訟支援業務はあくまで本人が行う訴訟のサポートとして、本人の指示に従い書類を作成して提出するだけの業務のはずですが、実際上は弁護士の領分まで踏み込み、日弁連と日司連間の争いのタネになっています。
本人訴訟支援は定額で弁護士の行う訴訟代理業務より格段に低い報酬となるはずですが、現実には弁護士同等の報酬を請求されます。
従って、弁護士委託なら弁護士による適切かつ十分な攻撃・防御が可能な場合でも司法書士ではそれがなされず、しかし費用は同じだけ要求されるという不都合が生じることがあります。
過払金返還訴訟では、貸金業者は相手が司法書士か弁護士かで対応を変えてくると言います。過払金返還額が1社当たり140万円を超えそうなときは弁護士にお願いする方が無難です。
サービス利用面での違い
弁護士事務所は大都市に集中していますが、司法書士事務所は中小都市でも必ず数軒はあるので、アクセスが大変便利です。それに一見こわそうな弁護士に比べ司法書士は一般に気さくな感じで訪問にも敷居が低く感じます。
アクセスの良さは勤労者にとっては大きなメリット、書類の作成や修正、出頭日の調整など面談が必要な場合も多いからです。
そして結論は?
次に該当する場合は弁護士への依頼が妥当と思われます。
■ 1社当たりの過払金請求額が140万円を超える(と予想される)事案
認定司法書士でも140万円超の事案は扱えないので、140万円を超えないように調整をしてしまうケースもゼロではない。また140万円以下でも貸金業者が地裁に控訴して事案を複雑化させ対抗する手がある → 司法書士は対応不可
■ 難しい法律問題や訴訟がからみそうな事案は弁護士へ
基本的に弁護士の専管業務
司法書士による本人訴訟支援は報酬に見合わないケースが多い。
■ 東京都や一部大都市に居住していて、手続き期間短縮と費用圧縮のメリットを受けたい。自己破産における即日面接、少額管財による期間と費用短縮は弁護士委託の場合のみ。
■ 多忙や体力的な理由により、書類作成や出頭の負担を極力抑えたい場合
弁護士の持つ代理権の強みが発揮される。
したがって、金額も少なくまた訴訟に発展しそうな要素も少ないケースで、出頭や文書確認など本人負担も苦にならず、東京に住んでいても期間短縮にこだわらなければ、利用上の利便性が高い司法書士にお願いする選択も充分にありえます。