借金の保証人:その責任と対抗策は?

引き受けた時は軽い気持ちでも、いざその時になるとことの重大さにがく然とするのが保証人という制度です。

日本弁護士連合会の調べによると保証債務や第三者の負債の肩代わりを原因として破産等の手続きを申し立てた人は破産債務者の約25%にも上る、つまり4人に1人は自分の借金が原因ではなく、他人の借金の保証人になったことなどが原因で破産しているとのことです。

先を続ける前に、まず保証人と連帯保証人の違いを押さえておきましょう*。

※その他身元保証人というのはありますが、借金とは直接の関係はないのでここでは除外します。

保証人と連帯保証人の違い

保証人とは

保証人には3つの権利が認められています。(1) 債務者本人の返済が滞ると債権者は保証人に返済を求めてきますが、保証人は「まず債務者本人に催促してくれ」と請求自体を拒否することができます。これが「催告の抗弁権」です。

(2) さらに債務者本人が返済に応じないでいると保証人に再度返済を求めてきますが、今度は保証人は債務者の返済能力や財産の存在を証明し「債務者本人に対する強制執行」を請求することで反撃が可能です。これを「検索の抗弁権」と言います。

(3) は複数の人が保証人になっている「共同保証」の場合です。これは保証人は債務を平等に分割した額だけを保証すればよいという決まりで、「分別の利益」という権利です。各保証人の負担はだいぶ軽くなります。

連帯保証人とは

連帯保証人とは債務者と連帯して債務を背負うことを誓った保証人ということで、その責任は単なる「保証人」にくらべて格段に重くなります。保証人に許された上述の3つの権利ももちろん行使できません。

このため連帯保証では、債務者が債務を払えなかった場合はもちろん、債務者が高収入で高い返済能力があるにもかかわらず故意に支払わなかったり、多額の財産などがあって強制執行ができるような場合でも、債権者側はそんなことは無視していつでも連帯保証人に返済を請求することができるのです。

一般的に金融機関などが融資の際に求めてくる保証人はほとんどがこの連帯保証人です。以上で見たように、返済に遅れが出ても保証人ではいろいろと手続きが面倒なのに比べ、連帯保証人ならすぐに全額の支払いを直接請求することができます。たった漢字二文字ですがその差は天と地ほどの違いに匹敵します。

また連帯保証人が複数いても、債権者はその中の一番取りやすい人を選んで全額返済を請求することができます。悔しくてもその連帯保証人に逃れるすべはありません。

実はこのように貸し手を過剰に優遇する、時代遅れの制度は日本独特のもののようです。理不尽ともいえる法律ですが対抗する方法はあまりありません。連帯保証人という制度は、借り手側にとって問題もリスクも多すぎます。連帯保証人を守る権利はほぼ皆無なのですから。

※ 補 足:
現在は連帯保証人の理不尽さが世間に浸透し、なり手が激減しています。それと関連して政府系の住宅ローンであるフラット35では保証人・保証料不要としています。これがかなり紛らわしいので補足します。

保証人とは、借り手本人が返済できなくなったときに借り手に代わってローンを返済する義務を負う人達です。そのため、近年は益々保証人のなり手がいなくなり、それを条件としたのではローンの借り手がいなくなることになります。

そこで一般化してきたのが保証会社というもの、そこに数十万円の保証料を払えば保証人を立てなくてもローンが組めるというしくみです。

そこで私みたいにまじめな人間が普通に考えれば、ローン返済ができなくなったときはこの保証会社が私に代わって払ってくれる、と思うのですがこれが大きな間違い、背後に善人?の思い込みを利用した巧妙なしかけがあるのです。

この保証会社というのは、借り手のローン返済が止まったとき代わりに銀行にローン残金を払ってはくれますが、払った分をその分をそっくり借り手に一括請求してくるのです。そして保証会社というのがほとんど、ローン貸付銀行の子会社、天下り先なのですからもう笑ってしまうレベルです。

そういう保証料ならローン貸付銀行がリスク対応のため保証会社に払うべきもの、それをぬけぬけと借り手に払わせているいるのです。銀行は保険料は払わずに保険金だけもらって知らぬ顔、日本とは実に不思議な国です。

そういうわけで、あなたがローン返済に詰まっても代わりに払ってくれる人も会社もありません。任意売却やその他の公的制度を利用して債務整理をすることになります。そして、このサイトのメインテーマ、自己破産はその最後の手段です。

さて、フラット35の保証人・保証料不要ですが、保証人不要はもう一般化していますからいいですね。そして保証料不要となっていますが、これは支払い金利の中から天引きされるということです(悪事が露見しないよう)。

ローンがストップすればやることは一般の銀行と同じです。ローン債権と交換に残金を保証会社から受け取ることになります。そして債権は保証会社から債権回収会社へと居所を変えて行きます。

ところで、保証会社を使うから保証人は不要としている金融機関でも、借り主の経済状態を見て不安と思えば連帯保証人を立てるよう求めてきます。夫婦の収入合算を条件にしたローンでは互いに連帯保証人にさせられます。そしてもし離婚してしまったら ・・・・・?

離婚を考える時は、連帯保証の有無を必ずチェックしましょう。こちらのページも参考にしてください。

保証人等に関する厳しい現実の例

自分が連帯保証人になっている住宅ローンの返済が滞っているとして、債権者は連帯保証人たる私の不動産を競売にかけ債権の回収をはかろうとしている。法的には問題無いそうだ。
※債権者の動きを知った時点でできるだけ早期に弁護士への相談をすべきです。

破産した契約者に代わり連帯保証人としてなんとかローン残額を返済した。破産者はその後経済的に立ち直り普通の生活をしているが、自分は弁済額の取り戻しもできず苦しい生活が続いている。
※破産者は免責許可の段階で、保証人への金銭的責任も免れています。

賃貸不動産の連帯保証人になっていたため、滞納家賃の返済だけでなく多額の原状回復費も請求され対応に窮している。
※借金と違い、賃貸不動産には保証人の負担が青天井で制限がありません。

夫と離婚するので、自宅ローンの連帯保証人から外れたいがうまくいかない。銀行からは別の連帯保証人を立てるよう言われている。

保証人の対抗策

なってしまった保証人、対抗策は限られていますがまず以上のような心配があることを念頭に、折を見て対応していくほかありません。

夫婦や知人との関係が怪しくなったら早期に保証人等の解除を検討する。

保証人等の責任の範囲は保証人本人名義の財産のみ。契約者の返済が良好なうちに家族などに財産を移してしまう。
※怪しいと知ってからの財産移動は取り消されることもあります。

住宅ローンの主債務者が配偶者で自分が連帯保証人になっている場合、離婚した配偶者の居所だけは掴んでおきたい。相手が困窮したとき競売ではなく自分で買い取る場合もあるので。

連帯保証人であっても、契約時に主債務者の経済状態や使用目的が充分に知らされていなかったり虚偽があった場合、連帯保証契約を無効にできる可能性があるのであきらめないで専門家に確認してみる。

参考外部サイト:自己破産よりまず考えるべき連帯保証外しの可能性

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