自己破産:家族への影響とその後の生活
自己破産に伴う差し押さえの範囲は申立人本人の所有財産に限られるものの、共同生活者たる家族への影響は避けられません。その辺をまとめてみました。
ただし何ら影響を受けない部分もあり、家族との了解のもと一致団結して不自由な生活を乗り切ることも充分に可能です。
家族への影響の大きなもの
■ 破産者本人の財産没収
現金・預金は99万円まで没収対象外。勤務継続中であっても将来もらえる退職金の一部も現金とみなされ現金に算入されます( → 自己破産のデメリット、これ知ってる?を参照ください)。
※給与は自己破産では差し押さえ対象外です。自己破産以前に債権者から給与の差し押さえを受けていた場合は、自己破産の免責決定によって差し押さえが停止されます。
■ 配偶者や親族が債務の保証人の場合
自己破産による免責の範囲は自己破産申立人の債務だけです。家族が保証人となっている場合は、取立の矛先が今度に家族に向かってきます。弁護士など専門家への事前相談が欠かせません。
■ 自宅敷地・自宅
競売対象となり家族もそこには住めなくなります。ローンが残っていても同じ、ローンの返済義務はなくなりますが今までの返済分がムダとなります。
なお、土地や自宅が破産者本人と家族の共有名義となっている場合は家族への影響は甚大です。
■ 賃貸住宅
自己破産を理由として立ち退く必要はありません。引っ越しなどで新規に賃貸契約を結ぶことも可能です。ただし、クレジットカード払いを条件とした物件は契約に苦戦するでしょう。
■ 自家用車
査定額が20万円以上なら没収の対象となります。都会ならともかく地方では車は家族の必需品、安価な車への乗り換えなど対策が必要です。
■ 家財道具
テレビや冷蔵庫などの家族みんなで使う家財道具は差し押さえの対象外です。 自己破産をしても一件当たり20万円以下のものはそのまま所有することができます。
■ 生命保険解約返戻金
解約返戻金が20万円を超過すれば解約を指示され、債務弁済に充てられます。
共有名義の不動産はどうなる?
仮に破産者の自宅が奥様と共有名義になっていたとしましょう。たとえ共有者がいても破産者の財産は精算の対象となので競売にかけられ処分される運命にあります。
競売の前に抵当権者(破産後の財産を処分して債務を回収する権利を有する者)から奥様に持分買取りの打診があるでしょう。その時に買取り資金の工面がつかなければ、結論として奥様の持分は消滅する公算が大きいです。
その経緯は次の如くです。その住宅は奥様の持分はそのままの状態で競売にかけられAさんが落札したとします。Aさんは奥様に明け渡しを要求できませんが、その住宅の分割引き渡しを請求をしてきます。
そんなことできないのでAさんはその住宅の全部を競売にかけることになり、今度落札したBさんは奥様の持分も含めた全部を所有することになります。
不法入居中の奥様はじめ家族一同は明け渡し要求に応ぜざるをえず退去する、そういう流れです。ここで登場するAさんやBさんはそういういわく付きの物件を専門に扱うやり手のプロ達です。
こういう最悪の事態を避けるには次のような方法が考えられます。
1.共有名義者同士で協力し不動産を全体として売却する。破産者の得た売却金は差し押さえ対象としても、もう一方の共有名義者(上の例では奥様)の売却金は手元に残る。
2.破産していない共有名義者が破産した共有名義者の持分を買い取る。不動産はそのまま残せる。
3.自己破産者側が資金の工面をして配当に回し不動産の売却を回避する。競売での売却金が時価よりかなり低いという現実を考慮した対応策です。
何れの方法を採るにせよこのケースでは家族だけで決めるのは危険が多すぎます。弁護士に事前相談して冷静に対処しましょう。
あまり影響ないもの
■ 税金など
国税、地方税、年金保険料、健康保険料、離婚養育費、奨学金返済などは、残念ながら自己破産しても全く免責されません。
■ クレジットカード
破産者本人のカードは当面は利用可能ですが、次回更新時に落とされる可能性大です。家族個人のカードは全く影響ありません。世帯主付属の家族カードの扱いは本人カードと同じです。
■ 銀行口座
本人も家族も影響ありません。銀行発行のキャッシュカードも同様です。
■ 収入源
給与、年金などに影響はありません。ただし一部の職業の従事者は自己破産手続き中は就業できないので、それが理由で勤務先に知られ辞職し、給与収入を失う場合があります。