公務員:職場に内緒の自己破産
公務員でも自己破産はもちろん可能です。しかし問題はその先です。その事実が職場に知れて居づらくなり、それが原因で仕事を失うことがあります。
失職すると公務員の安定した職業、安定した収入、培った人脈、それら全てがなくなります。
そうなるとその後の生活が成り立ちがたく自己破産が適切な判断だったのかとの疑問につながってきます。
そこで、このジレンマを少しでも解消すべく自己破産を内緒にするための注意点をまとめました。ちょっとの注意でその後の人生が大きく変わるかも知れません。
自己破産して公務員を続けられるか
国家公務員法、地方公務員法での欠格事由は以下の通りです。それには自己破産に該当する記述が無く、国家公務員、地方公務員とも自己破産によって職を追われることはありません。
1.成年被後見人又は被保佐人
2.禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
3.懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者
4.人事院の人事官又は事務総長の職にあつて、第109条から第111条までに規定する罪を犯し刑に処せられた者
5.日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張 する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
※公正取引委員、人事官、公安委員など特殊な役職の場合は自己破産が公務員の欠格事由となります。
また公務員であっても自己破産の事実を職場に報告する義務もありません。
公務員が自己破産する時に気を付けること
公務員が自己破産してそれが職場に知れてしまうと、その立場上、人事考課、昇給、周囲との人間関係など、その影響は一般の会社員と比べてより大きいものがあります。最悪、退職まであり得ます。どういう場合に知れてしまうかを見てみましょう。
■ 差押予告通知書の放置
自己破産を考慮中に、債権者から差押予告通知書が届くことがあります。そのまま何もしないで1ヶ月ほど放置すると、次に債権者は裁判所に訴えを起こし本当に財産の差し押さえが実行されることになります。
その差し押さえ財産の中に給料が含まれていると、裁判所から勤務先に差押通知書が送達されそこから勤務先に知られることになります。
更に給料差し押さえは債権者に渡す分(通常1/4)と本人に渡す分を分ける二重管理となるため職場内に広く知れ渡り、また給与計算部署にも迷惑がられます。そしてその影響は自己破産と同じかそれ以上のものがあります。
自己破産をしようとした矢先にこんなことになったら、正にパニックです。債権者から届いた差押予告通知書の放置は何もいいことがありません。早急に弁護士に相談し債務整理を本格化させるべきです。
■ 共済組合からの借金でわかる
公務員が有利に利用できる共済組合ですが、そこからの借金も含めて自己破産すると、勤め先は裁判所 → 共済組合のルートで自己破産の事実を知ることになります。共済組合からの借金がある状況での自己破産はいい選択にはなりません。任意整理などを検討すべきです。
■ 官報からわかる
官報とは国の発行する広報紙で、破産者はここに名前が載ることになります。通常は金融関係者ぐらいしか利用していませんが、官公庁では官報を日常的にチェックしている部署があります。
更に、最近ではインターネット官報によって自己破産者を検索できるようになっています。その手軽さゆえに知られるリスクは確実に増えています。
■ 退職金見込み額証明書の発行依頼でわかる
自己破産の場合、今やめた場合に受領できる退職金の1/8は財産とみなされ債権者への配当原資に回されます。そのため破産者は退職金見込み額証明書を入手し裁判所に提出することになりますが、不用意に勤め先に発行を依頼するとそこから破産の事実が知れてしまいます。
しかしこれは次の方法で回避可能です。国家公務員であれば国家公務員退職手当法、地方公務員であれば各自治体の退職手当条例等を根拠に算出し、算定根拠と算出結果を明確にした文書を作成してそれで証明書の代わりとするのです。裁判所もそれを受け入れています。
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さて、以上の注意をしても職場に知れるリスクはゼロにできません。知られてしまっても卑屈になることなく、家族のため、自分のため公務員を続けるべくがんばることになります。