意外とかんたん・自己破産手続き!
債務整理には任意整理、特定調停、個人再生、自己破産と4つの方法がありますが、ここでは自己破産に限った手続きの説明をします。
自己破産手続きのフロー
※ 注 記:
上のフロー図で少額管財とありますが、財産のある場合の自己破産手続きは本来管財事件として処理されるものです。管財事件の手続きはもっと複雑なのでフロー図ではその簡便法とも言える少額管財のみ記載しました。
財産あり/なしの判断基準や管財事件の解説は下記の別記事をご覧ください。自己破産で留意すべき重要ポイントが確認できます。
関連サイト:自己破産:同時廃止はこんなに有利
各手続きの説明
■1. 裁判所で審尋(しんじん)
自己破産の申立書類を提出後1~2ヶ月してから自己破産申立者の自宅に地方裁判所から呼び出し状が届きます.裁判官との最初の面接で、
・支払不能に陥った理由や状況
・債権者数や借金の総額
・債権者一覧の載せた債権者以外から借入れをしてないかどうか
などが聞かれます。かかっても15分程度で終わります。
弁護士に自己破産手続の依頼をしていた場合、東京地裁など一部の裁判所では「即日面接」という制度によって、自己破産の申立をしたその日(または3日以内)で終わらせることができます。本人が出頭することなく、一挙にフロー図の「申立書類を地方裁判所まで提出」から「*3の同時開始決定、免責審尋期日決定」まで進んでしまうのが特徴です。
■2. 破産手続き開始決定
調査、審尋の結果、裁判所に「支払不能」と判断されれば、審尋の日から数日以内に「破産手続開始決定」が下ります。もちろん「支払可能」と判断されれば、破産手続きは開始されません。
※同時廃止とは:
処分すべき財産がなく、免責不許可事由にも該当しないような場合、自己破産の開始決定と同時に破産を終結させる手続きです。免責までの期間が短く、費用負担も安く済むのが特徴です。自己破産の場合、9割近くは同時廃止事件となっています。
■3. 同時廃止決定・免責審尋日決定
同時廃止の場合破産手続きは終了し、「免責許可の決定」の手続きに移行します。なお、この段階では自己破産申立者は「破産者」として認定されただけで、借金はなくなっていません。この先の免責許可の手続きが本番です。
■4. 免責審尋
申立人本人が弁護士と共に裁判所に出頭します。質問の内容は破産後の再スタートに着目した次のようなものです。
・破産に至った原因を把握しているか
・現在の収支の状況などをしっかりと理解しているか
・以上の状況を今後の生活に活かせるようになっているかどうか
■5. 免責許可決定
同時廃止の場合は免責審尋の約1週間後、少額管財の場合は債権者集会の約1週間後に、免責許可決定が弁護士事務所に送付されます。
■6. 免責許可決定確定
免責許可決定後に約1ヶ月経過すると、法的に免責許可が確定し、自己破産手続が完了します。より正確には免責許可決定の確定は,免責許可決定が官報に掲載された翌日から2週間後ということになります。
確定に伴う通知などは特にないので、書面を手元に置きたければ「免責許可決定確定証明申請書」を裁判所に提出すれば証明書を入手できます。
この時点で借金の帳消し,いわゆる免責許可の効力が発揮されることになります。
■7. 少額管財
自己破産申立人に処分すべき財産がある場合や、免責不許可事由に該当する可能性がある場合、裁判所が管財人を選定します。これを管財事件と言います。
管財事件は終了まで通常1年以上かかり、自己破産申立人と裁判所双方に大きな負担となります。そこで東京地裁など一部の裁判所では少額管財という簡便法を採用しています。
※少額管財の「少額」の意味ですが、これは裁判所に事前納付が必要な費用である引継予納金の額と関係しています。通常管財事件の50万円に対して、少額管財の引継予納金は20万円となっています。
少額管財は弁護士を代理人に立てることが条件となりますが、終了までの期間が圧倒的に短く費用的にも同等なので(弁護士費用の増加は裁判費用の減少で相殺される)、現在は財産がある場合の自己破産手続きの主流になっています。
■8. 管財人選任・面接
裁判所は、破産手続開始の決定と同時に、破産管財人を選任します。その後、1~2週間後に自己破産申立者は弁護士同行で管財人事務所で出向き、破産管財人との面接する必要があります。
基本的には質問に答えているだけで問題ありませんが、この際に虚偽があると免責不許可になる場合があるので注意が必要です。
■9. 債権者集会
申し立ててから2~3ヶ月後くらいに「債権者集会」が開かれます。破産管財人から、収支・財産の報告があり、免責をさせるかどうかについての意見の申述があります。次に、意見があれば申立人の弁護士が意見を申述し、特に問題がなければ裁判官が事件終了の決定をします。通常の場合約5分間程度で終了します。
自己破産手続き完了までの期間
一般的に同時廃止や少額管財の場合、司法書士や弁護士への初回相談から起算して注記5番の免責許可決定まで4ヶ月前後かかると見ればいいでしょう。弁護士選任ならこの期間は更に短縮できる可能性があります。管財事件では少なくとも1年の期間が必要です。
専門家を頼まず手続きを全部自分でやることも可能ですが、期間短縮の面からはメリットがありません。それに期間短縮のメリットがある少額管財や次即日面接では弁護士の選任が条件となっています。
自己破産の手続きは司法書士と弁護士、どちらがいい?
司法書士は相談に乗り、書類の作成のみを担当する職務です。自己破産では地方裁判所への申し立てになるため、司法書士に依頼した場合、法廷内の手続や法廷への出頭はどこまでも本人が行わなければなりません。
自己破産手続きに精通した司法書士なら適切なアドバイスも受けられ、書類作成も円滑に進められます。この点では弁護士との違いは大きくありません。
ただ、自己破産申立人の現住所が東京なら弁護士に依頼すると「即日面接」のメリットが受けられます。これは弁護士に依頼した場合のわかり易い最大のメリットでしょう。
その他、費用面での違い、職務権限上の違いは別記事を参照ください。